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WriteSaber

文章とレトリックに関する覚ゑ書き

きほんの技術

【必須】漢字とひらがなを使い分けて文章の見た目を整える

2016/12/24

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文章を書いていて、漢字にすべきか、ひらがなにすべきか迷うことがあると思います。

パソコン携帯スマホタブレットの変換機能は漢字の使用にとっては便利ですが、その分ひらがなとの使い分けで悩む機会は増えているはず。

この記事では、どの場面で漢字とひらがなを使い分けるべきか、また参考にすべきフォーマルな使い方とはどういうものか、についてまとめました。

文字を開く、文字を閉じる

出版業界発の用語で、文字を”開く”、”閉じる”という言い方があります。

漢字をひらがなで表記する行為を「文字を開く」、逆が「文字を閉じる」です。

「文字を開く」を「文字をひらく」と表記することを文字を開くといいます。

「漢字」と「ひらがな」の割合が文章の見た目を決める?

スーツ姿の人に抱く印象と、Tシャツ短パンの人に抱く印象が違うように、文の印象(カタさ、重さ、むずかしさ)もある程度見た目で判断されます。

あたりまえの話ですが、漢字の割合が高ければ字面(じづら)は黒味がち、ひらがなばかりだと白味がちになります。

読み手は”黒さ”によって少なからずその文章の難易度と情報量を想像します。

書き手には、自分が扱う内容がどのくらいの難易度なのか、またどのくらいの難易度であるとアピールしたいかを客観的に判断する必要があります。

結論めいたもの:漢字本来の意味から離れたものを”ひらく”

漢字のメジャーな成り立ちは、形を簡略的に絵にした象形文字です。そのため一字ごとに意味があり、表意文字というものにカテゴライズされます(アルファベットは文字に音が割り与えられた表音文字)。

そのことを踏まえると、その漢字本来の意味から離れて使われるものは”ひらく”ことが自然です。

それが僕と言う存在だ。
それが僕という存在だ。

ティッシュで拭いて終わった事になる。
ティッシュで拭いて終わったことになる。

食べて見ると美味しかった。
食べてみると美味しかった。

そうすることで漢字部分が際立ち、理解促進に役立ち、見た目が引き締まります。

加えると、日本語は間違いなく「ひらく」方向へ向かっています。

文字を合理的に使っていく場合あたりまえの流れだと思います。

PC携帯スマホの変換機能の登場で手書きの時代とことなり漢字を書けることに価値が減ったことが理由かもしれません。

注意:文中で統一する

「ひらく」方向で考えるなか、どうしてもこれは漢字でないと気が済まない、という判断もまた認められるべきです。

漢字だろうがひらがなだろうが間違って使っていない限りゼッタイのルールはありません。

とはいえ、いずれの判断をしたとしても外せない大切なルールがあり、それは文中で気まぐれで表記を変えないことです。

付録:文字を”開く”界でメジャーなもの一覧

最後に、本来の意味から離れて使われがちなものをまとめてみました。

あまりにもひらがなが多い場合は左側を採用するなど、臨機応変に対応してもOK。

”やわらかい見た目で充実した内容”にかなった使い方の参考にしてください。

漢字(閉じる) ひらがな(ひらく)
~する程 ~するほど
~する事 ~すること
~の時 ~のとき
~の後 ~のあと
~等 ~など
~他 ~ほか
~達 ~たち
~毎 ~ごと
~迄 ~まで
~の下で ~のもとで
~する内に ~するうちに
~に当たって ~にあたって
~して見る ~してみる
~して置く ~しておく
~して行く ~していく
~に成る ~になる
一つ ひとつ
様々な さまざまな
殆ど ほとんど
専ら もっぱら
予め あらかじめ
出来る できる
~と言うジャンルに於いて ~というジャンルにおいて
~の様に ~のように
何時 いつ
何処 どこ
やろうと思っていた所 やろうと思っていたところ
矢張り やはり
最早 もはや
然し しかし
遂に ついに
故に ゆえに
所謂 いわゆる
尚更 なおさら
中々 なかなか
益々 ますます
尤も もっとも
有難い ありがたい
 伴う ともなう

 

Filed Under: きほんの技術, わかりやすさ(明快さ) Tagged With: 漢字とひらがな

重言(二重表現)は誤用か否か。セーフとアウトの境界線について

2016/11/08

「頭痛が痛い」「前に前転」「後ろにバック」など、同じ意味の表現がダブっているものを重言(じゅうげん)といいます。

ちなみに二重表現、重複表現もこれと同じ意味で使われます。

※この記事では「重言」として進めます。

重言に触れてみよう!

代表例である「頭痛が痛い」「馬から落馬」のほかにも、「後で後悔」「日本へ来日」など、重言の組み合わせは無限大。

代表格のいくつかを使って例文を作ってみました。↓

結婚式の式中、わき腹に鈍い鈍痛が走り、プロテスタントの牧師のことばにも呻き声のような返事を返すのが精いっぱいだった。

あらかじめ挙式を挙げる予定だったにもかかわらず、昨日調子に乗って馬に乗馬したせいだ。体の体調が悪く、熱が発熱し、腰に違和感を感じ、頭痛も痛かった。

そんな中、尽力を尽くすも、やはり案の定、馬から落馬し、肋骨を骨折した。後になって後悔しても遅い。

今の現状では、途中で中断してもらうよう申し出のお願いをするかはまだ未定だ。

1:「馬から落馬」型

  • 「馬から落馬」
  • 「日本へ来日」
  • 「挙式を挙げる」
  • 「部屋へ入室」
  • 「船に乗船」

これらのように「落馬する」「来日する」「挙式する」と単独で動詞化できるパターン。これは単純に用法に問題があり、回避率を高めるために、書き手はセンサーが必要です。

2:「プロテスタントの牧師」型

  • プロテスタントの牧師(カトリックは神父)
  • 若くして夭折(夭折:若くして他界すること)
  • 壮観な眺め(壮観:規模が大きく素晴らしい眺め)
  • 過半数を超える(過半数:半数を超えること)
  • 炎天下の下(下は不要)

語意を正しく把握しているかが問われるタイプです。知識が曖昧な言葉を背伸びして使わなければ、避けやすいでしょう。

3:「違和感を感じる」型

  • 違和感を感じる
  • 犯罪を犯す
  • 被害を被る
  • 旅行に行く

これらは厳密には問題ありません。

感じなければ違和感はなく、犯さなければ犯罪は生じえないからです。

どういうことかというと、「AをBする」とき、Bという行為がなければAはなく、「犯す」という行為によって生じる名詞がそれと親和性の高いものであるのは当然であり、漢字の重複が起こってもなんら不自然なことではないからです。

しかし、見栄えは悪いかもしれません。

また「誤用である!」と誤認している人が多いのもまた事実のため、できれば置き換えたいところです。

  • 違和感 → ある、覚える、持つ・・・
  • 犯罪 → する、行う・・・
  • 被害 → 受ける・・・

4:定着して許されたもの

  • 故障中(故障は状態を表すため、中は重言)
  • 事前予約(事前と予めが重言)
  • 防犯対策(犯罪を防ぐのはもはや対策、といえるかも)

もはや定型フレーズとして浸透したもの。論文や社説、リテラシーの高い場では避けることをお勧めします。

ちょっとしたまとめ: ×誤用 〇作法として間違い

文法の崩れも意味的な誤解もないとすると、重言は誤用というより作法(配慮)の問題です。

つまり「重言=間違い」というツッコミは不適当。重言は「マヌケな遠回り」が正しいツッコミとなります。

話し言葉(口頭)ではあまり違和感がない

重言は無駄な遠回りですが、意味を重ね塗っているともいえ、それが強調表現として機能する場合もあるのです。また重ねることで理解が容易になる作用もあります。

それが顕著なのが口頭の場合で、何回でも確認できる文字上とは違い、繰り返しが親切に受け取られるケースも多いと思います。

書いてしまうと逃げ場がない ”無配慮”に

口頭と比べ、文字上では読み手・書き手ともに十分な時間が与えられているため、重言の冗長(ムダ)な側面だけが強調されます。

付録:危険が危ないよく出る頻出重言61

最後に、できれば知っておきたい重言を集められるだけ集めてみたので、よかったら参考にしてください。

ありがちなので回避したい

  1. 全て一任する 「一任する」=全て任せる
  2. お歳暮の贈り物 お歳暮自体に贈り物の意味が含まれる。
  3. 後で後悔する
  4. 雪辱を晴らす 「雪辱」事態に「晴らす」という意味が含まれる。「雪辱を果たす」が正解。
  5. 過半数を超える 半数を超えることを過半数という
  6. いまだに+未~(未完成・未解決・未編集etc)
  7. あらかじめ+予~(予約・予定etc)
  8. 日本に来日/アメリカに渡米 系
  9. 挙式を挙げる 挙式=式を挙げる
  10. 捺印を押す 捺印=印を捺す(おす)
  11. 尽力を尽くす 〇尽力する
  12. 炎天下の下/炎天下の中
  13. 若くして夭折 夭折=若くして亡くなること
  14. 沿岸沿い 〇海岸沿い
  15. 加工を加える 〇加工する
  16. だいたい10kmくらい/約10km程度 それぞれ前後のどちらかでいい
  17. 従来から(従来より) 従来=以前から今まで。これまで。
  18. 壮観な眺め 壮観=規模が大きくすばらしいながめ
  19. 被害を被る 〇被害を受ける、損害を被る。
  20. 一番ベスト ベスト=一番
  21. おっしゃられる 「おっしゃる」「~られる」の二重敬

フォーマルなら避けたい

  1. 今の現状/今現在 どちらかで良い
  2. 内定が決まる 内定する
  3. 必ず必要 必ず要る
  4. まず最初に
  5. まだ時期尚早 
  6. 色が変色する
  7. 過信しすぎる
  8. 車の車間距離
  9. 引き続き継続する
  10. 水が増水する/水を放水する。
  11. 余分な贅肉
  12. わきで傍観する
  13. 連日暑い日が続く
  14. 秘密裏のうちに、成功裏のうちに 
  15. 各位様/~様各位 各位自体が敬意を表す→様は不要。
  16. 今朝の朝刊

できれば避けたい

  1. 違和感を感じる 違和感を覚える、違和感がある
  2. 返事を返す 返事をする
  3. お金を入金する 入金する
  4. 収入が入る 給料が入る
  5. 期待して待つ 期待自体に待つ意味が含まれる
  6. 各○○ごと
  7. 一番+最~(最高・最低・最初・最後etc)

豆知識

  1. 射程距離 射程=弾丸などが届く最大距離
  2. 生ライブ 生だからライブ
  3. 思いがけないハプニング ハプニングはいつも思いがけない
  4. 故障中 「故障」が既に状態を表しているので「中」は不要
  5. 霙交じり(みぞれまじり) 霙(みぞれ)=雨と雪が入り混じって降ること
  6. 元旦の朝 ※元旦=元日の朝
  7. 後ろから羽交い絞め 羽交い絞め=背後から脇の下に差し入れた両手を相手の首の後ろで組んで締め付けること
  8. 轍の跡(わだちのあと) 轍=車輪の跡
  9. クリスマス・イヴの夜 クリスマス・イヴ=クリスマスの前夜
  10. お体御自愛ください 自愛=病気などしないよう自分の体を大切にすること。お体は不要。
  11. ダントツ一位 「ダントツ」=「断然トップ」。俗語。
  12. 酒の肴 肴=酒を飲む際に添える食品

Filed Under: きほんの技術

意図的に悪文を書いて読み手を困惑させる方法

2016/09/27

悪文とはわかりにくい、読みにくい文の意味ですが、そんなものを書いてどうするのかとお思いでしょう。

悪文を自在に使いこなせれば、書かないといけなけれどすんなり読んでほしくない状況、たとえば謝らなければいけないけれど記憶には残ってほしくない謝罪文(たいてい悪文は頭に入りにくい)や、文字数が指定された反省文(たいてい悪文はムダに長い)に活用することができるのです。

また反対に悪文の構造を把握することで、意図せず悪文が飛び出るリスクを減らせることもメリットでしょう。

では悪文をつくるにはどうすればいいのでしょうか。今回はそのレシピについてご紹介していくのですが、その中でもっとも重要になるのが「語順」です。

”わかりにくさ”という一見主観的な基準に対して、語順を変えることでれっきとした法則性を示すことが可能なのです。

悪文的語順の法則を身に着けることで、日本語的な破たんを見せないまま、読み手を困惑させる方法が手に入ります。
[originalsc]

不適切な語順のつくりかた

『日本語の作文技術』(本多勝一・朝日文庫)を参考に、語順を生理的に最不適化する方法を探っていきましょう。

ここでは5つのパターンにわけて解説します。

1、修飾・被修飾を離す

私は佐藤が田中が砂糖を棚から盗んだと証言したのかと思った。

それぞれの修飾・被修飾ペアをもっとも遠く離すことで実現した、悪文界の模範囚。

どこへ出しても恥ずかしくない、大悪文の名をほしいままにする一文です。

悪文の悪例↓

私は田中が砂糖を棚から盗んだと佐藤が証言したのかと思った。

2、”句”や”節”を無視する

わたしは道を通行人に勇気をふり絞って初めて聞いた。

節とは主語・述語1セット、句は単体。

通常、文の中で節を前に出し、句を後にすると自然で読みやすい文ができるとされています。

また、時間をあらわす語句(昨日、明日、そのとき、…)はなるべく前に出す(重要性が高い場合がほとんどなので)のもおなじく自然さを生み出すセオリーです。

この一文はそれらを逆手に取り、派手さはないものの確かな悪文に仕上がりました。一度散らばった芯を無造作に詰め込まれたロケット鉛筆のような、絶妙な違和感が醸すフレーバーは玄人好みといえるでしょう。

悪文の悪例↓

わたしは初めて勇気をふり絞って通行人に道を聞いた。 「勇気を出して」を節とし前に出す

3、長い修飾語をなるべく後ろに配置する

明瞭な声でなぜかさつま揚げと今日は間髪入れずいつも聞かれると困ってしまう好きな食べ物の質問に答えられた。

「 明瞭な声で なぜか さつま揚げと 今日は 間髪入れず いつも聞かれると困ってしまう好きな食べ物の質問に 」を文字数の多いものを後方に配置しただけのシンプルな悪文。

”長い修飾語を前に置く”という自然さの法則を逆用した、良質な悪文。

悪文の悪例↓

今日はいつも聞かれると困ってしまう好きな食べ物の質問になぜか間髪入れず明瞭な声でさつま揚げと答えられた。

4、重要なことは後回しに、またはさりげなく最後に

 

毎度大好評のスーパーセールは

ここまでの1~3でご紹介したは、生理的にわかりやすい語順を逆用して悪文を作成する方法をご紹介してきました。しかしそれだけでは足りない要素があります。

それは「意味的な要素」です。

1~3の法則で基本的な語順が決定し、のこるは意味的・状況的に本来重要度が高いもの、強調したいものを文末にもってきます。

たとえば、(Ⅰ)

と、主語を早く明らかにすることで自然になり、その文で一番重要な存在が「私」であると明示します。

(Ⅲ)の例だと、

 

 

この場合、主語が誰なのか前後の文脈で自明なため省略されているのでしょう。そのため強調したい説明、状況を文頭に持ってくることができます。

これでこの一文における自然さは最大まで高まったと思います。

5、読点(、)を入れる

4のとおり、意味的に重要度の高いもの(『日本語の作文技術』では「大状況から小状況へ」と書いています)を文頭に持ってくることで、その文の語順的な自然さは完成します。

しかし、法則を理解するうえで、あくまで基本となるのはⅠ~Ⅲ。

意味的なわかりやすさの基本法則を飛び越えるイレギュラーな行為(頻出であるけれど)という認識でいると整理しやすいと思います。

イレギュラ―なときは、読み手にそのことを明示するために、読点の出番です。

ほかに句読点を使うべきタイミングについてはこちら

[st-card id=222]

参考:逆手に取った”わかりやすい文”のための語順ルール

  • 修飾語はなるべく近くに置く
  • 節を前に、句を後に置く
  • 長い修飾語から前に置く
  • 意味的に重要なもの(主語や場所や時間)を前に置く
  • 意味的に重要なものが前に来ていると示す読点「、」を打つ

まとめ

今回は語順を中心に悪文の作り方をご紹介してきました。

ほかに邪道として、「カタカナ語を鬼のように多投する(ルー大柴型)」や「重言をふんだんに盛り込む」など悪文作成術には種々の流派が存在しますが、ここではキリがないのでまたの機会に。

お疲れさまでした。

Filed Under: きほんの技術 Tagged With: 悪文

句読点の使い方「。、」 大前提と6つのルール

2016/09/03

句読点(くとうてん)の使い方・打ち方で、文章は整理され、ます。

ちなみに句読点とは、句点(、)と読点(。)の総称です。

”音読してみて” ”息継ぎのタイミングで” といったある種感覚的な使い方から、合理的な使い方へ。

言葉や文章に絶対的なルールは存在しない、

読まれることを前提にすれば、合理的なルールは存在します。このルールに則れば、途中で投げ出されることを大幅に減らすことも可能です。

また、人の文章を読む際に、見方にひとつ大きな物差しが加わることにもなります。

というわけで、この記事では、文章再構築の第一歩として最適な句読点のルールについてご説明します。それでは見ていきましょう。

無駄に打たない

句読点を「読みやすさ」に最適化するために、まずポイントとなるのが”むやみに使わない”ということです。↓のようになっている方は要注意です。

たまに、読点「、」を、マシンガンのように、打つ人を、見かけます。
誰かに、理不尽な、ノルマでも、課されているのか、と、思って、しまいます。

また、句点「。」を異常に出し惜しみし、一文を長々と続け、割烹仕込みのかつら剥きか、パティシエの皮むきのように文章をしたためる人もおり、ひたすらに長いだけならまだしも、その内容は縦横無尽に飛び散り、したがってその構造はスパゲティのごとき複雑さを呈し、読み手は次第に書き手のキーボードの故障を疑いだし、果てはその理由を金欠かズボラかと思案するような、もはや読み手の思考を混濁させ、窒息させることが目的としか思えないほど、繰り返しや意味の重複が多く、言いたいことが伝わらない、宝石を含む岩石を粗雑に切り出しそのまま指輪にしたような、そんな文章を書いてしまう人も・・・

まずは句読点を封印しましょう。

本来の役割、効用についてまとめる際にひとつ豆知識。

句読点が最初にオフィシャルになったのがいつだったのか知っていますか?それは今から110年前、1906年、明治39年「句読法案(句読点法案)」にさかのぼります。

それまで日本語には明確な表記基準がありませんでした。ゴリゴリに近代国家を目指す政府は、この法案を通して日本語を共通ルールのもと引き締めにかかったのです。

当然そこには句読点が必要とされた理由が書かれています。

ざっと要約すると下記。

  • マルを文末に打つべし。
  • テンを構造を示すために打つべし。
  • テンを誤解釈を防ぐために打つべし。

むやみに打ってしまうと、本来の機能が発揮されず、読むうえで邪魔になってしまうことさえある、ということなのです。句読点は、文における道路標識であり、信号機であり、交通整理員。

大前提として、句読点は”必要な場所にあればOK”なのです。

もちろん、これらは”自然に読みやすい文のセオリー”であって、あらゆる場面で厳格に適用すべきだ、というわけではありません。

これを逆手にとって、ルールに反する使い方で生じさせた違和感を、独自のリズムや強調作用として活用することも可能なのです。

しかしそれはセオリーを理解したあとでなければ危険です。

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では読点について具体的にご紹介します。

読点の使い方・ルール

読点を使う目的は主に2つあります。1つ、意味を区切って構造をアピールすること。2つ、誤読を防ぐこと。

まずは意味・構造的な読点です。

1、「長い主語」「長い述語」「長い修飾語」のあとに打つ

これはとてもシンプルな話で、長い箇所の意味のカタマリを一目で伝える役割。

以前は罰ゲーム的なイメージで通っていた青汁が、いまやその飲みやすさから手軽な健康ドリンクとして広く認知されるようになった。

2、「重文」「複文」の区切りに打つ

あまり重要ではない専門用語ですが、簡単なので説明します。

文には「単文」「重文」「複文」という種類があり、それぞれ

わたしは歩く。(単文)

わたしは歩き、犬は走る。(重文。単文×2=重文)

わたしは歩くが、犬は走る。(複文。単文でも複文でもないほとんどの文章)

重文と複文で句読点が必要な場面として、「理由」「逆説」「対比」「前提」(~ので、~だが、~一方で、~すれば、)などがあります。

わたしは細い犬を見ると、足が勝手にペットショップの方角へ向く。(わたし=主語 見る=述語)(足=主語 向く=述語)

3、接続詞のあとに打つ

「つまり」「そして」「しかし」「例えば」「また」「あるいは」「しかも」のあとに

接続詞を使うということは、意味的な展開がおこるということ。展開を示すとき読点を使いことで構造を明示することができます。

一方で、複数の接続詞のなかで強弱をつけたい場合は、強調したい箇所以外あえて付けないという工夫もあります。目的の反応を得る為に、特定の箇所を強調したいとき有効です。

 

次からは誤読を避けるための読点です。

*      *      *

4、アンラッキーな連続を断つために打つ

意外とよくあるのが、偶然出来上がった文に内容と関係ない言葉が浮き上がってしまうケース。

北大路欣也は、その日本を読んだ。
↓
北大路欣也はその日、本を読んだ。

文の中央の「日本」という字が邪魔です。こういったケースは読み手側に小さくても余計な負担となっていきます。些細な問題でも、書き手側が配慮する姿勢が必要です。

5、意図しない意味にとられかねない場合に打つ

これは点を打つ場所によって意味が変わってしまいかねないケース。これ自体は特に珍しいことではなく、たいてい文脈や話の流れから自明のためそこまで意識されません。しかし、書く側が小さな配慮で回避できるならばそれに越したことはありません。

普段から自分で読んてみて「わかりにくい」と感じたら別の表現に置き換ましょう。

あなたはコーヒーを飲みながら夕日を眺める鞠子を写真に収めた。

さてコーヒーを飲んでいたのは誰でしょう。この文だけではまったくわかりません。

あなたは、コーヒーを飲みながら夕日を眺める鞠子を写真に収めた。

あなたはコーヒーを飲みながら、夕日を眺める鞠子を写真に収めた。

6、単語を列挙する場合

例:人間大のセミが東京タワーのテッペンにしがみついたとき、鳴き声はどこまで届くでしょう。神奈川、静岡、鹿児島の3つのうちから選んでください。

同じ種類の単語を列挙する場合も入れざるを得ません。
ちなみに、この用途で「・」(=なかぐろ、中黒、中点)を使っても問題ありません。出版業界では歓迎されずフォーマルではありませんが、列挙の場合をなかぐろに任せれば、読点の機能をより際立たせることができます。

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句点の使い方・ルール

句点は

マルハ文ノ終止スル場合ニ施ス(句読法案 第一章 マルより引用)

とあるとおり、文の終わりに打つ以外ルールはありませんが、種々のカッコと併用される際にはフォーマルとされる使い方があります。

1 丸カッコ→()での使い分け

一番ポピュラーなカッコにおいて、使い分けがあります。

  • 文の内容を補足したい場合は、句点の前、文章の内側に収めます。

例:2017年度の和歌山県予選は智弁和歌山が制し、見事甲子園出場を決めた(二年ぶり12回目)。

  • 引用、注釈をする場合は、句点の後、文章の外に置きます。

「ワタナベ君、あの煙なんだかわかる?」突然緑が言った。わからない、と僕は言った。
「あれ生理ナプキン焼いてるのよ」
「へえ」と僕は言った。それ以外に何と言えばいいのかよくわからなかった。

(引用:村上春樹『ノルウェイの森(上)』、講談社文庫、p,125)

2 カギカッコの会話文では

会話文でおなじみカギカッコにおいても、ちょっとしたフォーマルな慣例があります。

上の例文でも登場していますが、カギカッコ内の会話文では句点がありません。これは多くの出版業界のルールです。

しかし、小学校では基本的に、下記のように句点をカギカッコ内に収めるように習うのです。

例:たかしくんは「ありがとう。」といいました。

どちらも間違いではありません。しかし成人しているならメジャー基準に合わせておきたいところです。

3 「!」と「?」の後は

最後は感嘆符(エクスクラメーション・マーク =exclamation mark)と疑問符における場合。

これらを使う場合、句点は不要です。

 

まとめ

どうでしょうか。こうしてまとめると、

1、機能を理解すること(長い主語の後に)
2、余計に使わないこと(必要な場所のみ)
3、読む側に歩み寄ること(誤解の余地をなくす)

というシンプルな結論です。

 

 

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