普段「的を得る」という表現を使っていますか?
ご存知の通り「ものごとの核心、要点をついている。言いたいことをうまく表している。」という意味です。
的を得た意見、的を得た指摘、的を得た内容… 一般的な表現なので、あたりまえに使っていると思います。
ただし、無意識で使っている場合は要注意です。
この記事では、「的を得る」についておさえておきたい注意事項についてご紹介しています。
1、誤用…?
まず、「的を得る」はしばしば誤用(日本語の間違い)として取り上げられてきた表現、だということを知っておかなければなりません。
最近まで長い間、よくTVや本などで誤用の代表格のように扱われてきました。
しかし最近、その扱いに疑問を持つ人が増え、説得力を増します。そしてついに「的を得る」は辞書(三省堂国語辞典・第七版)に掲載されました。その言い分は以下。↓
2、重要なのは誤用かどうかではない?
しかし、ほんとうに大事なのは誤用かどうかではありません。
ちゃんと問題があることを知ったうえで、意識して使うこと(また使わないこと)。
誤用と思っている人がいること、誤用ではないと思っている人がいること、そして、はっきりと「誤用である!」と思っていない人にさえ、
と思われかねないということ。
そう考えると、基本的に使わないほうがいいでしょう。
的を得るというフレーズに無類の愛着があるなら止めませんが、日本語にはほかにいくらでも表現があります。
日本語の誤用は、それ自体が罪なのではなく、説得したり何かをうまく伝えたい場合、読み手のノイズになるからやめた方がいい、ということです。
文章の目的、つまり「読み手をなるべくこちらの想定したゴールへ導く」ために言葉を選ぶ、そのための知識の一つとして押さえておかなければなりません。
3、代わりに使える表現
そのつど文脈やシチュエーションにあった表現を使うのが一番だと思います。
どうしても的を得るを回避したい場合のために、「的を得る、得た」の代わりに使える表現をまとめてみました。参考程度に使ってください。
的を得た〇〇≠
的確な〇〇
適切な〇〇
気の利いた〇〇
腑に落ちる〇〇
鋭い〇〇
要点をとらえる
核心をとらえる
本質をとらえる
的を射た〇〇
正鵠を得た〇〇
正鵠を射た〇〇
ツボを押さえた〇〇
心の中で親指を立てたくなるような〇〇
納得の〇〇
言いたいことをすべて言ってくれた
おもわず膝を打つような
おまけ、日本語のお茶目さ
「独壇場(どくだんじょう)」という言葉も、もとは単なる読みまちがいでした。
正しくは、独擅場(どくせんじょう)。
独擅場の擅(せん)という手へんの字が見慣れなかったため、余りにも多くの人に「花壇」や「仏壇」の壇(だん、土へん)と見間違えられ、そのまま定着してしまったのです。
ひとりで壇の上に立つ!というイメージがハマったのかもしれませんね。
ひょっとすると、コトバの歴史はそんなものかもしれません。
誤用とは、間違っているから悪い、のではなく、読み手に不信感を抱かせるから悪い、のであって